約 1,058,495 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2853.html
俺の名前は平賀才人。ルイズの『二人目』の使い魔だ。 元々俺は地球の日本にいたのだが何の因果かハルケギニアっていう場所に呼び出されちまった。 召喚されたときはそりゃ泣いたりしたが『住めば都』っていう言葉通り結構環境が良かった。 ご主人様であるルイズは以前までは結構厳しい性格だったらしいが。 『最初に召喚した使い魔』のおかげでその性格を改善したらしい。恩に着るよ。 俺がルイズに怒ったことは、初めてルイズの部屋に入った時にドアを開けたら本の山が俺に襲いかかってきたことだ。 そのとき俺は本の中に埋まって危うく死にかけるところだった。 部屋の中も凄まじく、ところせましに本の塔が建てられていた。 俺はルイズに少しは片づけたらどうだって言ったらルイズは返事をしただけで以来ちっとも片づけようともしない。 しょうがなく使い魔として掃除しようとしたら乗馬用の鞭で叩かれちまった。痛かったぜ…。 そんなあくる日のこと、ルイズのいない部屋でのんびりしていたらふとある物が目に入った。 それは『帽子』だった。よく魔法使いが被る黒い帽子、それがベッドの横に置いてある。 俺は何故かそれが気になったので帽子を手に取ってみると帽子の下に日記が置いてあった。 タイトルが書かれてあったがこの国の言葉はまだわからなかったら何なのかさっぱりだった。 俺は気になったのでページを開いてみると…そこには懐かしい日本語が書かれていた。 俺はプライバシーに関わりそうな事を理解して、日記を読む事にした。 ○月○日 (これは私が元いた世界の日にちだが) 私を召喚したルイズって奴から日記を借りた。 こんなに珍しい事は無い、珍しい事があったら日記に書き取っておこう。 しかしルイズから聞いた話だけだがこの世界には珍しい物がたくさんありそうでワクワクするぜ。 ▽月⊿日 今日ルイズやキュルケ達と一緒に『土くれ』のフーケとか言う奴を退治しにいった。 そいつはでかいゴーレムを作って襲いかかって来たが私の『マスタースパーク』であっという間に倒してやったぜ。 その後にノコノコと出てきたフーケの正体はなんと学院長の秘書だった。あの時は驚いたぜ。 『破壊の杖』は手に入れたかったが学院長が断固として断ったため代わりに『遠見の鏡』をもらった。 ★月★日 アルビオンから久方ぶりに帰ってきた。 まさかあのワルドって野郎が敵だったとは知らなかった。まぁすぐに倒してやったけど。 後帰るついでにアルビオンの宝物庫からいろいろと拝借してきたぜ。 でもそのせいでお姫様の愛人をむざむざ見殺しにしてしまった。 あの時気づいていれば助けられたのに…本当に情けないぜ。 ☆月☆日 やっと元の世界に帰れる方法を見つけた。 ルイズはそれを聞いて帰らせまいと私にしがみついたが仕方なく自作の眠り粉をかがせた。 この日記は置いておこう、短い間だったがルイズは私のことを本当の親子か何かのように慕ってくれた。 だから私がここにいたことをここに残しておくぜ。後、名残惜しいが良く喋る剣も残しておこう。 本当ならすぐにでも帰りたいがなんかこの国にレコン・キスタとかいう連中が近づいているらしい。 どうせ最後だ、この霧雨魔理沙がハルケギニアにいたことを記録に刻んでやるぜ。 追伸、恐らく次に召喚される奴。人間で日本語が分かる奴に伝えておく。 私の代わりにルイズの世話を見てくれ。 『タルブ会戦』の折、箒に跨りたった一人でレコンキスタの旗艦『レキンシントン』号を沈めたうえに竜騎兵を全滅させたメイジがいた。 その者の名は……キリサメマリサ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、霧雨魔理沙。
https://w.atwiki.jp/shinsen/pages/4846.html
陰陽師 攻撃術 式神召喚・弐 目録 召喚術・参 必要気合 840 必要アイテム 呪符 ウェイト 2 効果時間 式神が倒れるまで 発動準備 なし 使用場所 戦闘専用 効果 ランク2の式神を召喚し、ともに戦わせる。 特徴 憑依攻撃(敵単体に若干ダメージと確実に呪い。ウェイト?) 憑依回復(召喚者を回復。ウェイト?)が使える 敵の攻撃の対象になる その他情報 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3230.html
前ページ次ページゼロと疾風 黒い壁があった。それは、例外なく目の前に現れる。ストリートのガキにも、大統領でさえ。 ほとんどのモノは、それを砕くことは出来ず、乗り越えようとするモノは爪が剥がれ、赤い筋を残すことになる。 ほとんどのモノはその壁から目をそらす。しかし、その壁に真っ向から向かい合っているモノもいる。 その黒き壁にあがこうとする人間がいる。この物語はそんな人間の物語。 現在、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは医務室にて頭を抱えて一人の男を見ていた。男はベッドの上で気を失っている。 ルイズは二年生へ進学する際のサモン・サーヴァントによってこの男を召喚・契約したのだ。 「なんで、こんな奴召喚しちゃったのよ・・・・・・」 先日、「サモン・サーヴァントには自信がある」と言ってしまったばかりである。 その結果がこれ。 本来、動物や幻獣を召喚するサモン・サーヴァント。その、儀式で人間(そのうえ、気を失っており、かなり傷ついている)を召喚してしまったのでルイズは周りのギャラリーから笑いものにされた。 その場にいたコルベール先生が彼の身なりから判断し。 「彼は凄腕の傭兵であるにちがいない」と言っていたが、メイジに平民に敵うはずが無い。 いくら、凄腕といっても平民の傭兵を召喚しては意味が無い。 「どうしようかしら・・・とりあえず、雑用でもさせようかな?」 ルイズがそんなことを考えていると男の眼がゆっくりと開き、起き上がった。 白髪の男性はチップという。彼は自称ジャパニーズ、しかし、大統領を目指している忍者である。 チップが長い眠りから眼を覚ました。頭がまだぼやけている。 チップはよく頭をめぐらせた。 (そうだ、I=NOのやつと戦っていたら急に何かに巻き込まれたんだった・・・) チップはI=NOの時間移動に巻きこまれたのだ。そんでもって、気がついたここにいる。 「やっと気がつたのね」 声のした方向を向いてみると一人の少女がいる。ルイズである。 「まずは自己紹介でもする?私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。一応よろしく」 隠れた表情を読むのは忍びの基本だ。チップが彼女から読み取った表情。 見下し、怒りをとおり越した諦めetc 少なくともチップの嫌いな人間に当てはまっている。 しかし、相手が名乗ったのだ。自分も名乗るのが筋だろう。 それに、ここが何処だか分からない。 「チップ、チップ=ザナフだ。ここは何処だ?薬品の臭いがするってことは病院かなんかか?」 「ここは、トリステイン王国・トリステイン魔法学院の医務室よ」 チップの聞いたことが無い地名だ。それに、魔法学校というのは法術に関する機関だろうか。 「とりあえず、ここを出ましょう。私の部屋で貴方が今置かれている立場を教えてあげるわ」 チップがルイズとの状況確認によって分かったこと。 この世界(月が二つあるのでチップのいた世界ではない)では魔法使いがいて、彼女は魔法使いの貴族である。 そしてこの場所は貴族が通う魔法学校である。 学生は二年生になるとき使い魔を召喚する。 チップはその使い魔を召喚するサモン・サーヴァントによって召喚された。 召喚される使い魔は自分での選択は出来ない。 使い魔は本来幻獣や動物が召喚される。 一度召喚されたからには変更は出来ない。(召喚のやり直しを求めたが却下されたらしい) チップとはもうすでに契約を行っており、証拠は左手に刻まれているルーン。 元に戻る方法は少なくも彼女は知らない。 大体こんな感じだ。他にもなんか言っていたが正直チップは興味なかった。 ルイズがチップとの状況確認によって分かったこと。 チップは異世界から来た。 (幾つかその世界について質問したがすぐに答えが返ってきた。特に矛盾点は無く嘘をついている様子も無いので一応信じる) チップは異世界ではニンジャという種類の傭兵である。 現在、ローニン(雇い主無しのフリー状態という意味らしい) チップの世界には法術があり、それは魔法と少し似ているらしい。 I=NOという女と戦っている最中、その女の何かに巻き込まれ気がついたらここにいる。 他は特に興味なし。 部屋着いてからこれらの状況確認に1時間かかった。この時間が短いと感じるか長いと感じるかは皆さんの自由だ。 「とりあえず、私は貴方の生活の保障、それと元の場所に戻れる方法を探すわ。 その代わり、あんたはその間私の使い魔、つまりわたしに雇われる。それでいいわね?」 「しょうがねえな・・・わかったよ」 ちなみに、状況確認からこのやり取りまで、更に30分間。正直メンドイので省略。 こうして、チップとルイズの生活が始まった。 「とりあえず、もう疲れたわ。朝になったら起こしてね。それと、洗濯頼んだわよ」 「はあ?なんで俺がそんなことしなきゃならないんだ?エリカだってそんなこと言わなかったぞ」 「エリカって誰よ?」 「俺が前仕えていた奴だ。大統領をやっていたな」 「ダイトーリョーってなに?山賊や大工の凄いバージョンの親玉?」 「国の代表だ、王様みたいなもんだ。いや、王様は『成ることが出来る』もんだが大統領は『選ばれなきゃ成れない』つまり、王様より偉い奴だ」 「へー」 「でもって、俺はその大統領に雇われていたが、 そんなこと頼まれなかったぞ。王様より偉い奴がしなかったことをテメエはするの?」 「う・・・」一時間半以上の怒鳴りあいによって疲れているルイズには論破する気力はなかった。 「洗濯ぐらい自分でやれ、あと自分で起きろ」 ルイズとチップの生活は前途多難だ。 「じゃあ、あんたが寝るところだけど・・・」 「別に必要ねえよ」 「へ?」 「忍びは闇に潜み主を守る。用があるなら手を叩け」 そういうとチップは闇に消えていった 部屋に取り残されたルイズは考えていた。 雑用などは断っていたが、あの身のこなしは凄い。 「意外と使えるのかな?」 最初決めていた彼の扱いを少し変えなくては、と考えた。 しかし、今は眠い。 「明日考えよ」 ルイズはそういい終えると服を脱ぎ、ベッドにもぐり寝息を立て始めた チップはやるからにはやる男だ。 物には必ず『芯』がある。守るも攻めるも、まずはこの芯を押さえる。チップはまず魔法学校の芯を探した。 歴史の古い建物というだけあって、様々な隠し部屋・隠し通路などがあった。 チップはその中のある隠し部屋に陣取った。ここなら、どんなことが起きようとすぐに分かる。 チップも疲れていたのか、全神経を研ぎ澄ませて眠りについた。 前ページ次ページゼロと疾風
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3994.html
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ! もうもうと立ち込める砂塵があたりを覆わなくなったころ、爆心地には奇妙なものがあった。 「・・・なによこれ」 サモン・サーヴァントがようやく成功し、歓喜に満ち溢れていたルイズは自分が召喚した それ を見て表情を曇らせた。 「ミスタ・コルベール!やり直しをさせて下さい!!」 「だめです。儀式は神聖なものです」 「でっ、でも! あれ どうみても生き物じゃありません!」 「早くコントラクト・サーヴァントを行いなさい。そうでなければ進級できませんよ」 「そんな・・・」 我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔となせ ルイズは召喚した それ に対して契約を行った。 それ は人よりもはるかに大きく、四角く、白かった。 それ は人ではなかった。触れてみるとひんやりとしていた。 それ は人を多く収容できるほどの空洞と屋根を持っていた。 「本当になんなのよ これ ・・・ あら、なにかしらこれ」 ルイズは それ の近くに一枚の紙が落ちていることに気がついた。 その紙にはこう書かれていた。 「やっぱりイナバ百人乗っても大丈夫!」 株式会社稲葉製作所より「イナバ物置」を召喚
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4605.html
前ページ次ページ鋼の使い魔 目を覚ました時、彼は清潔に整えられた一室のベッドに横たわっていた。彼は傷づいていた。深い火傷と、切り傷と、煙を吸って肺を焦がしていたのだ。 しかし、今目を覚ました彼は、自分の体にそのような瑕疵がないことに気付いた。飛び起きる彼はさらに、自分が鎧を脱いでいる事に気付く。 「……此処は……どこだ…」 仕切りの向こうから人が入ってきた。少女一人と、頭髪の薄くなった男性が一人。 「目を覚ましたようですね」 男は彼に話しかけてくる。 「ここはトリステイン魔法学院。貴方はこのミス・ヴァリエールにサモン・サーヴァントでよび出されたのです」 時間は遡る。 トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式。それは二年次に進級する学生達が使い魔を召喚、契約し、自身の魔法属性と専門課程を決める大事な儀式である。 しかし彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、既に使い魔召喚の口上を数十回繰り返していたが、辺りには爆発によって地面に穿たれたクレーターが散見されるばかりで、使い魔に相応しいような生き物は影も見当たらなかった。 「ゼロのルイズは使い魔も召喚できないのか!」 「しょうがないよなぁ、だってゼロのルイズだしさー」 ギャラリーの心無い声にルイズの心は張り裂けそうだった。 杖を握る指が震える。忸怩とした気持ちと絶望が顔を覆う。 生徒たちを見守る役目を受けた教師コルベールは、ルイズを囲む生徒たちを下がらせ、ルイズの傍に立った。 「ミス・ヴァリエール。気負ってはいけませんよ」 「ミスタ・コルベール……」 己の無能に落胆するルイズに、あくまでも優しく、しかし強い心を込めてコルベールは説く。 「使い魔は、主人の半身ともなる大事な友です。そんなにしょげていては、やってきてくれませんよ」 「でも…私は…」 「無心に願いなさい。さすればきっと、始祖ブリミルの導きで、貴方にふさわしい使い魔を呼び寄せることができるはずです」 コルベールの説得にルイズは呼吸を整え、再び杖を掲げた。 「宇宙の果てのどこかにいる……わたしの僕よ。神聖で美しく、そして、強 力な使い魔よ。わたしは心より求め……訴えるわ。我が導きに……答えなさいッ!!」 ルイズは願った。自分にも使い魔を、誰にも侮られない使い魔をください。魔法が使えない私にせめて胸を張れるような使い魔を……。 振り込んだ杖の先の地面が、光を放って爆発する。巻き上がる土煙は、これまでの失敗よりもずっと激しく立ち昇り、広場を包んだ。 「ケホ、ケホ……つ、使い魔は……?」 土煙が収まらないまま、ルイズとコルベールは爆発の中心を覗く。カチャリ、と金属が擦れるような音がする。 徐々に収まっていく土煙の中に倒れていた、一人の男。煤に汚れた金髪と肌、精巧さと合理性を合わせたような見事な鎧をつけた意丈夫の男が、そこに倒れていたのだ。 「私達はひとまず、貴方の体の怪我や火傷を治すために、学院の医療室に運ばせていただきました」 「……」 男は言葉もない。目を芝立たせ、コルベールの説明を聞いていた。 「貴方の意思を聞かずに、コンクラクト・サーヴァントを行わせたことについては、ミス・ヴァリエールに責任はありません。ひとえに教師として私が指示した事です」 コルベールは男の左手に記されたルーンを指す。 「これは使い魔として契約したものに記される使い魔のルーンです。使い魔に関する詳しい話は、そこのミス・ヴァリエール本人に聞くのが良いでしょう」 話を振られたルイズは、コルベールと男の顔を交互に見るが、何を口出していいのかわからず、顔を背けてしまった。 「ひとまず此処は引き払いましょう。身に着けていたものはミス・ヴァリエールの部屋に送らせて頂きました。ではミス・ヴァリエール。私はこれで」 男はルイズにつれられてルイズの部屋に移った。部屋の隅に男が身に着けていた鎧や装飾品、そして「剣の抜かれた鞘」が積まれていた。 男は鞘を手に取りルイズに聞いた。 「これに収まる剣があったはずなんだが、知らないか」 「知らないわよ。あんたが召喚された時、最初から剣なんで入ってなかったわ。あんたが身に着けていたものは、そこにおいてあるので全部よ」 ベッドに腰掛け、男をまじまじと見るルイズ。 「使い魔の契約もしちゃったし、今日からあんたは私の使い魔よまず……」 「月が二つある……」 話を切るように男が呟く。男は窓から見える大小の月を見ていた。 「どうして月が二つあるんだ?変じゃないか」 「何言ってるのよ。月は二つに決まってるじゃない」 そう答えると、男の顔色が変わったのがルイズにも判った。どこか険しい色を含んでいる。 「グラン・タイユという地名を知っているか」 「グラン・タイユ?知らないわね。……何、月も見えないような田舎から来たって言うの?」 「ナ国は?ヤーデ伯というのに聞き覚えは?」 「なにそれ?知らないわ」 ルイズが質問に答える度に、男の顔に何か濃いものが挿していく。 「……アニマと術がわかるか?」 「アニマって何?術って魔法の事でしょ。あんた一体どれだけ田舎者よ」 質問が途切れた。男は座り込んでうつむいてしまったのだ。 「……ちょっと、あんたさっきから質問ばっかりして。なんなのよ……」 ルイズにしてもたまったものでなかった。やっと呼び出した使い魔は、傷だらけの平民で、傷を治してやったら、今度はよく分からないことを色々と聞いてくるのだから。 「……ルイズ、と言ったな、お前」 「お前とは主人に対して失礼ね。ルイズ様、とかご主人様、とかいえないの」 「俺はお前がどんな人間か判らないからな。敬語をつかうべきかどうか知らないね」 とりあえず、と、男は言葉を一旦切る。 「俺は随分と遠くにやってきてしまったらしい。術もない、アニマも知らない。そんな場所があるなんてな……」 「……はぁ、どうしてこんな田舎者を使い魔にさせたのでしょうか。始祖とコルベール先生を恨みます」 ルイズと男はお互いに別々の理由で、どこか悲嘆にくれていたが、ルイズは改めて向き直して、男に話しかけた。 「まぁお互い色々と思うところはあるけど、あんたは、私の、使い魔になったんだから。やるべき事はやってもらわなくちゃいけないのよ」 男もルイズに顔を向けて話を聞く。 「じゃあ、何をすればいいんだ。言っておくけど俺は何もできないぞ」 「使い魔はまず、主人と感覚の共有ができるはずなんだけど……無理みたいね」 みたいだな、と男は相槌。 「次に、使い魔は主人に望むものを見つけてくるのよ。秘薬とかね」 「薬草の類なら知らなくもないが、あんまり当てになりそうにないな」 そう、とルイズが相槌。 「最後に使い魔は主人の身を守るんだけど……鎧と鞘着けてたんだから、腕の覚えはあるんでしょ」 「まぁな。……そうでなければ今まで生きていなかっただろうしな」 「……まぁいいわ。とりあえず私の護衛兼、小間使いとして置いてあげる。ありがたく思いなさい」 ひとまず話すことは話したのでルイズは気持ちの整理がつき始めていた。もう使い魔として契約してしまったのだから、こいつを使いこなさなければならないと、そう腹に決め始めていた。 「……元の場所に帰る方法はないのか?」 「ないわ。サモン・サーヴァントは呼び出すだけ。そもそも人間が召喚されるなんて、今まで聞いたことも無いし」 「でも俺は此処に呼び出された。しかも俺が気を失っている間に、こんなものまでつけて」 左手の甲をルイズに見えるように男は掲げた。 「ぐ……仕方なかったのよ!使い魔召喚を失敗したら、私はここを追い出されてしまうわ。領地に戻されても、お母様やお父様に合わす顔もないし……」 顔を背けてぽつぽつと声にならない呟きが漏れていくルイズ。 「……本当に帰れないのか」 「ええ……やっぱり帰りたいわよね」 「そうだな。向こうにはたくさん、遣り残した事があるんだ」 男の眼は静かに前を見ている。ルイズは少しだけ、そんな男がまぶしい。 「しかし帰れないんじゃ仕方が無いな…。使い魔、やればいいんだろ」 「……そうよ。やってもらわなくちゃ、困るわ」 あくまで男に対し主人として命令する立場に立ちたいルイズはしかし、男が身の処遇に納得してくれたことに安堵したのだった。 「……とりあえず、今日はもう遅いから寝るわ」 ベッドの上で服を脱いで下着姿になったルイズは、男に服を投げつける。 「洗濯物。明日洗っておいて頂戴。後、朝になったら起こしてくれる?」 男は目の前に投げつけられたルイズの服に唖然としていた。 「男に自分の服を洗わせて恥ずかしくないのか?」 「だってあんたは使い魔だもの」 おやすみ、とベッドにもぐりこんだルイズは、気付いたように男を見て、 「そういえば、名前を聞いてなかったわね」 「俺も教えた覚えが無いな」 床に毛布を敷いて寝床を作っていた男も答えた。 「名前は?田舎者でも名前はあるんでしょう?」 ごろりと横になったまま、 「名前か……」 男は自らを名乗った。 「俺の名前は、ギュスターヴ」 前ページ次ページ鋼の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1712.html
前ページ次ページゼロの大魔道士 「で、ですが!」 「そうはいいますが、ミス・ヴァリエール。ゲートから出てきたと思われる以上…」 現在、ルイズは非常に狼狽していた。 召喚に成功したと思えば、当の召喚獣――竜(マザードラゴン)が契約前に逃げ出してしまったのだ。 これは前代未聞の出来事であり、同時に大恥であることは間違いない。 いや、それだけですめばまだいいほうだ。 実家に伝わればヴァリエール家の恥として放逐されてもおかしくはない。 だが、絶望に沈もうとしていたルイズを拾い上げたのは何故か頬を赤らめたコルベールだった。 時間は数分前に遡る。 気色悪い呆け顔で「ぱふぱふ…」とか呟いていた彼コルベールが、ルイズの下に敷かれている人間に気がついたのである。 コルベールの指摘でようやくそのことに気がついたルイズは慌てて跳ね起きた。 生徒の誰かを尻に敷いていたまま放置していたのならばそれは十分に失礼な行為だからだ。 だが、見下ろした顔に見覚えはなかった。 それどころではない、気絶して寝転がっている少年は見たこともない服装をしているではないか。 「…なんで平民がここに?」 ルイズはぽつりと呟いた。 ここトリステイン王国には、決定的な身分差が存在している。 すなわち、貴族と平民だ。 その判別方法は至って簡単で、魔法を使えるものが貴族、そうでないものが平民というもの。 中には例外(貴族から没落したメイジ)などもいるが、この概念はトリステインに住む者ほぼ全てに適用される。 然るに、ルイズの目の前にいる少年はマントこそ着用しているものの、見たことのないデザインの服を身につけている。 そして杖は持っていない。 つまりは、この少年は平民であると判断されるわけである。 「ふむ、どうやらこの少年もサモン・サーヴァントによって現れたようですな」 「え?」 「ミス・ヴァリエール、この少年とコントラクト・サーヴァントを」 「へ、え? えええええ!?」 ルイズは驚いた。 このハゲ教師はいきなり何を言い出すのか。 そもそも、自分が召喚したのはあの神々しい竜である。 間違ってもマヌケ面を晒して気絶している平民ではないはずだ。 「召喚した生物とコントラクト・サーヴァントを行うのが今日の目的です。であるからして」 「ちょ、ちょっと待ってください! 私が召喚したのはあの竜で…!」 「ですが、逃げられてしまったでしょう?」 「う…」 容赦のないコルベールの一言にルイズはグウの音も出ない。 だが、コルベールとしてはこの場における一番の打開策を出したつもりだった。 確かに竜は逃げ出してしまったが、少年も召喚によって現れたことは間違いない。 となると、少年もルイズと契約を交わす資格を持っていることになる。 複数召喚などこれまた前代未聞の出来事だが、始祖ブリミルは四体の使い魔を所有していたという。 これはルイズが規格外の存在であることを示しているわけであり、少年もなんらかの特殊さを持っている可能性は高い。 ならば、この場を取り繕うという意味もあるが、とりあえずコントラクト・サーヴァントを行うのが一番良いはずなのだ。 「あはは、流石はゼロのルイズ!」 「召喚した使い魔に逃げられたと思ったら、平民と契約か!」 確かに…と納得しかけたルイズに周囲の生徒から野次が飛ぶ。 コルベールほど洞察に優れない彼らは単純な事実『竜が逃げた』『残ったのは平民』という二点を認識していたのだ。 「ううっ…」 ルイズはぎゅっと唇を噛んだ。 竜を使い魔に出来ると思っていたのにそれが平民にランクダウンしたのだから無理もない。 だが背に腹はかえられない。 使い魔に逃げられるという失態を犯した以上、もはやコントラクト・サーヴァントを嫌がるという選択肢は取り様がないのだ。 「し、仕方ないわね! アンタで我慢してあげるわ!」 そして時間は現在に戻る。 どうにか心の折り合いをつけたルイズは少年を抱き起こすと顔を近づけ、詠唱を始めた。 と、その時。 「う…あ…?」 少年が目覚めた。 意識はまだハッキリしていないのか、目がキョロキョロと動き回る。 だが、ルイズはそれに構わずに更に顔を近づける。 詠唱が終わり、少年――ポップの視界いっぱいにルイズの顔が映り、そして 「ん…」 契約のキスが交わされた。 「うっぐ…な、なんだ…!?」 ポップは急な痛みに意識を覚醒させた。 周囲の状況を確認するよりも先に痛みが体を駆け巡る。 その痛み、熱といいかえてもよいそれは左手へと集中していく。 そして数秒後、ポップの左手には奇妙な紋様が浮かび上がっていた。 「な、なんだこれ!? 呪いか!?」 「失礼ね! これはルーン。アンタが私の使い魔になった証よ」 「は? ルーン? 使い魔? 一体何を言って…」 「ああ、ごちゃごちゃうるさい! いい、私は今非常に気が立っているの! ああもうなんでこんな平民と…」 「落ち着きなさいミス・ヴァリエール」 癇癪を起こしかけていたルイズに近づいてきたのはコルベールだった。 (おいおい、冗談じゃないぜ…) ルイズをなだめすかしているコルベールを常識人と見たポップは状況を把握するべく彼に話を聞き、空を仰いだ。 サモン・サーヴァント、トリステイン、ハルケギニア… そのどれもが聞き覚えのない単語ばかりだった。 しかも、話をまとめると自分は目の前のピンクの髪の少女――ルイズというらしい、の使い魔になってしまったのだという。 (本人の承諾なしにそんなこと勝手に決めんなよ…) 既に自分を使い魔扱いしているルイズにポップは溜息をつく。 気になることは二点。 まず、ダイはどうなったのかという点だ。 話を聞いた限り、マザードラゴンはどこかへ飛び立っていったという。 彼女の性質上、人の目に付くような場所に降り立つとは思えないので発見は困難だろう。 (ようやく見つけたっていうのに…) 話を聞く限り、すべての原因は目の前の少女にある。 如何に女の子に甘いポップといえどもそういう事情となればルイズに好印象を抱くのは無理があった。 「何よその目は」 「いんや別に」 「言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」 一方、ルイズはルイズで目の前の少年に憤っていた。 彼女本来の目的からすればコントラクト・サーヴァントが成功しただけでも十分満足できるはずだったのだが なんせ竜→平民という格差である。 怒りを覚えるのも無理はない。 かくして、ルイズとポップという少年少女の邂逅はお互い共に悪印象から始まるのだった。 ついて来いとせかすルイズとそんな少女を心配気に見守るコルベール。 そんな二人を見ながらポップはもう一つの懸案事項――これからどうするか、を考える。 とりあえず、ここは見ず知らずの土地であることは間違いない。 目の前の人物たちが精霊や魔族に見えない以上天界ないしは魔界という線はない。 発見されていない大陸、というのも流石に考えづらい。 となると考え付くのは―― (異世界とか? まあ天界や魔界があるんだから可能性はあるんだが…あ、そうだ) ポップはこっそりとある呪文を呟いた。 その呪文の名は瞬間移動呪文ルーラ。 一度訪れた場所に一瞬にして移動できるという高等呪文の一つである。 (…発動しない? いや、発動後にキャンセルされた?) ルーラの発動自体は確かに起こった。 だが、ポップの体はその場から一歩も動かない。 そう、まるで『行ったことがない場所に向けてルーラを唱えた』かのように。 (おれは今確かに昨日のキャンプ場所を想像したはず…おいおい、マジで異世界の可能性が高くなってきたぞ…) バーンパレスのように空にバリアが展開されているわけでもない。 というかそうだとしてもある程度までは移動が行われるはず。 にもかかわらずルーラはポップの体を運ばない。 これが指し示すことはつまり、ルーラの効果が及びようがない場所に自分はいるということになる。 (勘弁してくれよ…) 大魔王と戦うなんていう非常識をこなしてきたポップからしても異世界に飛ばされたという事態は想定外にもほどがあった。 ダイはどこかへ行ってしまった、帰る方法はわからない。 生命の心配こそとりあえずなさそうではあるが、状況は最悪だといってもよかった。 (とりあえず、情報を集めねえと) ダイを探すにしろ、元の場所に戻るにしろ、右も左もわからない場所にいる以上情報は必須である。 長い間旅を続けてきたポップは情報の大切さをよくわかっていた。 そして、情報源として期待できるのは目の前にいる二人の人間であるということも。 (しっかし、契約ねぇ…呪いみたいなもんじゃねえか) 自分をおいてサッサと行こうとするルイズを半眼で睨みつつポップはどうしたものかと頭をひねらせる。 少なくとも自分は同意した覚えがないのに勝手に使い魔にされたのだ。 情報を集めるという目的上、主人だというルイズに友好を示すことはやぶさかではない、可愛いし。 しかし、使い魔というのは御免被る。 いくら可愛い女の子とはいえ、下僕にされるのは嫌だし、自分にはダイを探すという目的があるのだ。 そのためにはフリーな立場に戻らなければならない。 いっそこの場からトベルーラで逃げ出すか? そんな不穏なことを考える。 (待てよ、ひょっとしたら…) ポップの頭に閃きが走った。 現在、自分をルイズの使い魔たらんと示しているのは左手のルーンである。 つまり、逆をいえばルーンさえなければ使い魔契約は撤廃できるということになる。 だが、聞いた話では使い魔の契約が切れるのは使い魔、つまり自分が死んだ時だけだという。 当然、死ぬ気などサラサラないポップ。 (あの呪文なら…) この時、彼が思いついた方法は思わぬ事態を引き起こすこととなる。 だが、神ならぬポップは物は試しとばかりにその呪文を唱えた。 「シャナク!」 前ページ次ページゼロの大魔道士
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/475.html
前ページ次ページ斬魔の使い魔 何処かの次元の何処かの宇宙。 そこで二体の巨人、デモンベインとリベル・レギスが血闘を繰り広げていた。 滅びを撒きながらの闘いは、果たしてリベル・レギスの勝利に終わった。 コックピットを抉られ、瀕死の重症を負ったデモンベインの術者、大十字九郎。 「……く、九郎」 彼の名を呼ぶのは魔導書にしてパートナーたる少女、アル・アジフ。 彼女もまた重傷を負い、その構成を維持できなくなっていた。 身体から魔導書のページが滲み出ている。 「アル……くそっ……!」 白い輝きが宇宙を照らす。 モニターの向こうで、リベル・レギスが左手を白く輝かせていた。 絶対零度の極々々々低温の手刀、ハイパーボリア・ゼロドライブ。 滅びの白い輝きが迫ってくる。 もはやどうにもならない。 九郎とアルの魂が絶望感で塗り潰されていく。 そのため、二人は気がつかなかった。 眼が焼け付くほどの輝きの中、現れた鏡の存在に。 それはいかなる奇跡なのか。 この日、無貌の邪神が生み出した無限螺旋の宇宙から、魔を断つ剣は消え去った。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称ゼロのルイズは叫んだ。 この召喚を成功させる。そして、自分を馬鹿にしていた連中を見返すのだ、という思いを込めて。 その瞬間、上空に巨大な魔法陣が出現した。 半分、揶揄を込めて見ていたギャラリーが、様子を見守っていた教師が、そして当のルイズが驚愕した。 通常、「サモン・サーヴァント」でここまで大規模な現象が起きることはない。 さらに彼らを驚かせたのは、そこから現れたマントのような翼を広げた巨人。 その圧倒的な存在に、ただただ放心していた中、一足早く正気に戻ったルイズは心の中でガッツポーズをした。 (やった……こんな凄いゴーレムを召喚できるメイジなんて他にいるはずが無いわ! 私はやったのよ!) だが、そのルイズの喜びは一瞬で消え去った。 眩い光と共に、巨人が一瞬で消滅したのだ。 巨大な魔法陣も消え、まるで何事も無かったかのような静寂が訪れた。 何が起こったのか理解できず放心状態のルイズ。 ――と。 上空を見上げていた生徒達の背後で爆発が起こった。 慌てて振り向く一同。 同時に―― 「わきゃっ!」 上空から落ちてきた何かに押しつぶされたルイズ。 それは少女の姿をしていたが、ぶつかった衝撃でバラバラの本のページになった。 それは、ルイズと同化するようにその身体に溶けていく。 最初にルイズの様子に気付いたのはキュルケだった。 もっとも、ぶつかった瞬間を見ていない彼女の目には、ただ爆発に驚いて転んだようにしか見えなかった。 「ちょっとちょっと、何をやっているのよ、ルイズ」 「う、うるさいわね! 何かが頭にぶつかったのよ!」 はいはいと笑いながら手を差し伸べる。 その手を払って自分で起き上がるルイズ。 その様子を見て苦笑するキュルケ。 「ところで、あの人間、貴方が召喚したんじゃないの?」 え? と驚いて顔を向ける。 そこには、逆さまに倒れて目を回している見知らぬ男の姿があった。 「……へ?」 フラフラとした足取りで男に近づくルイズ。 傍で男の様子を観ていた教師のコルベールは、ふむ、と呟くとルイズに振り向いた。 「どうやら彼が召喚された使い魔のようですな」 「……えっ!? じ、じゃあ、さっきのゴーレムは!?」 「皆目見当がつきませんが、ひょっとしたら彼と何か関わりがあるのかもしれませんな」 未だに目を回している男に顔を向けるコルベール。 ルイズもまじまじと顔を見る。 (じ、冗談じゃないわよ! こんな、情けない顔をした平民を召喚したですって!? これじゃあ、またゼロのルイズって 馬鹿にされるじゃない! こんな! こんな――) ジッと見つめながら心の中で罵倒を繰り返すルイズだったが、見つめている内に、ふと理由の判らない心の 痛みに襲われた。 思わず俯く。 その瞳から涙が零れ落ちた。 (何……これ?) 訳が分からない痛み。 そして、こうすれば痛みが消えると云わんばかりに男に顔近づける。 契約の呪文を唱える。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与 え、我の使い魔と為せ」 そして唇が触れ合う。 瞬間、 「ぐあぁぁっ!」 男がのた打ち回る。 左腕が放電している。魔力の放電だ。 異常に気付いたコルベールが、ルイズを下がらせる。 男の左手の甲に紋章が浮き出て、前腕部分にルーンが刻まれる。 しばらくしてルーンが刻まれ終えると魔力の放電も消え、男も落ち着きを取り戻した。 「ふむ、珍しい形のルーンだな。甲に刻まれている紋様も初めて見る。さっそく調べなければならないな」 男は気絶したままだが、呼吸は安定している。 まるで冬眠をしているかのように静かに眠っている。 一方、ルイズの胸の痛みも消えていた。 訳が分からないが、とりあえず「コントラクト・サーヴァント」に成功したことは確かなようだ。 「では、皆さん、教室に戻りますぞ」 巨大ゴーレムのショックがまだ消えていないのか、いつもなら騒がしい生徒達も大人しく「フライ」の魔法で飛んでいく。 コルベールは途中で止まり、 「ミス・ヴァリエール。後で人を寄越します。しばらく新しい使い間の傍にいてやりなさい」 ルイズは答えなかったが、沈黙を肯定と見たコルベールはそのまま飛び去った。 残されたルイズは、ジッと使い魔を見つめていた。 その晩、学院を巨大な魔力が覆った。 魔力が消滅した後、謎のゴーレムのことを覚えている者は誰もいなかった…… 前ページ次ページ斬魔の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2591.html
ラ・ロシェールの街は、アルビオンとトリステインを繋ぐ港町として栄えているが、元々は戦争のために作られた砦であった。 現在は宿として使われているが、この街一番の宿『女神の杵』亭は砦を改装した店だと言われ有名である。 ふだんは旅行客と船乗りを相手にするラ・ロシェールの酒場も、神聖アルビオン帝国との戦いを目前に控えた現在、客層は兵士・傭兵・人夫・商隊がほとんどであった。 娼婦達も稼ぎ時だとばかりに馴染みの酒場へ出かけ、客をとっては宿へ行き、金のない者は倉庫で済ませ、あげく人気のなさそうな路地へと引き込むものもいる。 そんな娼婦達にも、近寄るべきではない場所というものがある。 たちの悪い盗賊や人攫いが、寂れていそうな酒場に集まると、すぐに女達の噂となり、ごく自然にその一角から姿を消していく。 彼女たちはお互いが商売敵ではあるが、互いの境遇から来る同情心と、身を守るための仲間意識を捨てた訳ではないのである。 だからこそ、女たちの近寄らない酒場の裏手から、華奢な女が出てくるというのは、同業者にしてみれば異常な光景なのであった。 (嫌な視線ね…) ルイズは自分に向けられた視線を気にして、フードの端をつまみ深く被り直した。 とぼとぼと夜の街を歩きながら、自分がここに来た理由を思い出していた。 (表面上は平和でも、裏通りは油断のならない街だわ) ラ・ロシェールを警備する衛兵達は、衛兵と自警団だけのは治安の維持に限界があると考え、市内の管理を任されているメルクス男爵に改善の措置を訴えていた。 しかし、提出された嘆願書はもみ消された。 アルビオン人(戦争前にアルビオンから疎開した者、戦時にアルビオンから逃げ出した者)と旧来のラ・ロシェール住民の間に、意図して対立を深めようとする第三者の行動があると分かっていながら、それを無視するのがどうにも不可解であった。 また、着の身着のままアルビオンを脱出した者は、行き場もなく飢えに苦しんでいる。 ウェールズの纏める亡命政権が、旧来のアルビオン民と連絡を取り合い救済に奔走しているが、食料も場所も用意できてはいない。 奴隷商人や人さらいの餌食になっているのが現状であった。 傭兵もまた、雇われたからといって、命令通りに戦うとは限らない。 商人と結託し、トリステイン軍の内情をアルビオン帝国に売ろうとする者も出てくるだろう。 最悪、補給線の崩壊もありうるのだ。 ラ・ロシェールの街は補給を行う上で重要な拠点だが、王宮の目が行き届かない場所でもある。 アンリエッタは戦争を機に、ラ・ロシェールに信頼できる銃士隊を送り込んで監督をさせようかと思ったこともあるが、ウェールズが反対した。 船乗りの集まる街の気風は、ウェールズのほうがよく知っている。 少しでも疑問があるなら念入りに調査するべきだが、監督という名目では現地の人間と軋轢を生むのは得策ではないと忠告した。 マザリーニもそれには同意見だが、どの貴族も戦争の準備で忙しい上、銃士隊も魔法学院の警備・訓練で手一杯。 魔法衛士隊やトリステイン軍を使って内偵を進めるにも、顔が広い貴族がいてはやりにくい。 なので、ルイズがこの件に興味を持ったのは渡りに船であった。 (それにしても、やっぱり、話し相手が居ないと寂しいわね) ルイズは無意識のうちに、今は背中にない鞘の感触を確かめようと背後に手を回していた。 (お父様が時々呟いた言葉、今ならよくわかる) ルイズの記憶には、父であるヴァリエール公爵の言葉がこびり付いていた。 『兵を食わせなければならない』単純だが、自分が生き血を必要とするように、普通の人間には食事が必要だと再認識すれば、その言葉はとても重くなる。 貴族・国家が集めた傭兵の数は膨大であり、食料の確保だけでも一つの事業と言える。 『まず食糧、次に人数』 そう言ったのは父だろうか、父と話している誰かだろうか、はっきりとは思い出せないが、とても重要な言葉だと思えた。 ずっと昔に父や、近しい人から聞いた話が今頃になって重要な話しだと解る。 おそらく自分が魔法学院に残っていたら、この記憶が引き出されることも無かっただろう。 皮肉にも父親から離れて初めて、父母や家庭教師の何気ない言葉が、大切な知識だと思えてくる。 でも、ウェールズやアンリエッタよりずっと自分は幸福な気がする。 たとえ会えなくても、家族は元気でやっているのだから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ラ・ロシェールの朝は早い。 北側の岸壁は朝焼けで赤く染まり、反射光が街中を優しく照らしだすと、夜を生きる人々は眠りにつき、昼を生きる人達は仕事の準備をする。 日が昇るにつれて人通りが多くなり、店の軒先には果物や野菜が並び始めた。 街道沿いの店で、今日最初の客がリンゴを買う、客はラ・ロシェールは初めてなのか、桟橋の場所を店主に聞いて店を離れていく。 店主は、今の客は旅慣れているようだが傭兵には見えない、貴族でないメイジかもしれない等とくだらない想像をめぐらして見送る。 そんな朝のひとときに、本日一軒目の事件が起きた。 「おう!こいつ、俺にぶつかって財布を盗もうとしやがったぞ!」 「なに、ふざけるな!」 店主が声の方を見ると、大柄で色黒の男が、身なりの良い男の腕をひねりあげている姿があった。 多くの人はこんな光景に慣れており、またスリが出たか、最近は特に多いな、と思う程度だった。 「それにしても身なりのよさそうな奴がスリなんてなあ、その服を売れば多少の金になるのに」 「おい、また泥棒が出たのか」 「またアルビオンの奴らか」 「いや、どうもそうじゃあないんだ、同じ奴が何度もやられたって叫んでるらしい」 「なんだそりゃあ」 どこからともなく聞こえてきたその噂は、静かにラ・ロシェールの街で広まっていった。 衛兵の詰所は世界樹に近い高台にあり、街道沿いの壁を繰り抜いて作られている。 奥には倉庫、牢屋、そして見張り台に通じる階段があり、そこからラ・ロシェールのほとんどを見下ろすことができた。 朝から見張りを続けている衛兵は、岸壁に映る影の角度から昼飯が近いのを知る。 そろそろ交代の時間だ、ようやく休憩だ、昼飯だ。と考えながら後ろの階段を見た。 丁度良く交代の衛兵が上がってくる、今日も時間ぴったりだなと言って、弓矢を壁際のテーブルに置いた。 「おいアルヴィン。交代だぞ」 「やっとか。今日は騒がしいみたいだな」 「さんざん騒がれたスリが、ついさっき捕まった。仲間割れを起こして何人か殺してるらしいぞ。休憩してる暇はなさそうだな」 「げえ、何て日だ。戦争も近いってのによう」 「早くいけよ、隊長にどやされるぞ」 「へいへい」 アルヴィンと呼ばれた衛兵が階段を降りると、詰所の正面に人だかりができているのが見えた。 入口前の歩哨が「見世物じゃないぞ」「さあ散った散った、通行の邪魔だ」と言って人だかりを散らしている。アルビンは興味なさそうに詰め所の奥へと入っていき、とっとと硬いパンを食べることにした。 詰め所の一番奥には牢屋があり、今しがた逮捕された男は手枷をはめられて牢屋に放り込まれている。 その目前には見張り用のテーブルと椅子があり、衛兵隊の隊長は銃士隊の女に椅子を譲って、事情を聞いていた。 隊長は白髪混じりの髪を後ろで纏めた初老の男性で、顔にはナイフで切られたような傷もあり、傭兵団の隊長と言われても違和感のない厳しい顔をしている。 銃士隊の女性は、戦えるとは思えない華奢な体付きをしているが、男を軽くひねり上げる実力はたった今証明されたばかりである。 「ご協力に感謝いたします。まさか銃士隊の方に来ていただけるとは思ってもいませんでした」 「成り行きとはいえ、これも仕事のうちよ」 この男を逮捕したのは銃士隊のロイズ(ルイズ)である、衛兵隊の隊長は逮捕の一部始終を聞いて呆れ返った。 銃士隊であるロイズをスリ呼ばわりしたので、股間を二三度蹴り上げて昏倒させ、衛兵の詰め所に連行してきたらしい。 うつろな目で宙を見ている犯人は、よほど強く蹴り上げられたのか、文句ひとつ言わず牢屋へと連行されていた。 「銃士隊の方が逮捕してくださるのは有難いですが、我が衛兵隊の不甲斐なさが露呈したようで大変申し訳無いことです。この男が根城にしていた酒場で死体が見つかりましたが、あなたが逮捕してくれなければ逃げられていたかもしれません」 「こいつがドジなだけよ、さっさと逃げずに欲をかいたのね」 「まったくです」 ところで隊長さん…ラ・ロシェールは衛兵が足りていないと聞いているわ。その点、どうなの?」 「おっしゃるとおり、自警団と協力しておりますが、平民ばかりでは限界があります」 「伯爵には訴えなかったの?」 「ラ・ロシェールは、メルクス男爵が実質的に統括しておられます。何度か窮状を訴えましたが、考え過ぎだとか、桟橋の警備で手一杯だと言われまして」 「それは…」 「人も金も足りないのは分かっているのです。しかし、現実にこういった争いが積み重なって、暴動に発展する恐れがあります、それだけは避けたいのです」 隊長の表情からは、苦労がにじみ出ていた。 「隊長さん、あなたにとっては大変つらい知らせだと思うけど…」 ロイズ(ルイズ)は、銃士隊である自分がここに来た理由を説明した。 衛兵たちが達が提出した嘆願書に応じてこの街に来たのではなく、嘆願書が破棄されていると報告があったので内偵に来た。 王宮へ届く報告書は『貴族の手で安全を維持され、万全である』という内容だが、この矛盾は何であるのかを調べるという。 場合によっては街の治安に関わるメルクス男爵の内偵も進めると聞き、衛兵隊長は両拳を握りしめて、悔しさに耐えていた。 「直属の上司たる男爵に疑いがあっても、我々には直接どうすることもできません。どうか、この街のためにも、真実を明らかにしてください」 「…あなたは、ずっと衛兵を? 失礼かもしれないけど、あなた言葉に品があるわ。執事の経験があるみたい」 「私の父はメイジの傭兵団で身辺の世話をしていました。私も父の手伝いをしていたので、よく可愛がられたものです。言葉遣いはその頃に習いました」 「だから嘆願書を書くなんて知識があったのね」 「ええ。傭兵団が解散した時、故郷であるこの街に戻って来ました。父は報告書を書くのに役に立つと言われ衛兵になり、私も同じ仕事しようと思っていました。この街は、私と父の思い出で溢れているのです」 「……そうなの」 ロイズ(ルイズ)は何か心に感じるものがあったが、それが何なのか言い表せなかったので、余計なことを考えないようにと表情を固くした。 「ええと、それじゃ、そろそろロバートって子を預かっていくわ」 「はい、あの子にも悪いことをしました」 「ねえ隊長さん。 …ロバートが財布をすったって話、信じたの?」 「言わないでください。私も、悩んだのです」 パンをかじっていたアルヴィンは、奥の部屋から隊長が出てきたのを見て、どっこいしょと椅子から立ち上がり敬礼をした。 「隊長。アルヴィンです。見張りをコーラスに引き継ぎました」 「ご苦労、しばらく休んだらリック達と『金の酒樽亭』に”掃除に”行ってこい」 「掃除…つーと、あのボロ酒場でまた?」 「喧嘩じゃないぞ。奥の倉庫で五人死んでる、盗賊の仲間割れだ。ひどい有様だよ」 「うへえ。了解しやした」 飯を食ったあとに死体を片付けるのは嫌だが、仕方がない。 「そういや、誰か捕まえたって話で?」 「ああ…それはな」 と、隊長が言いかけた所で、奥の扉が開き、フードを被った女が少年を連れて牢屋から出てきた。 「ほら、ロバート。胸をはりなさい。あんたの疑いは晴れたんだから」 「……」 女が少年の背中を軽く叩くと、少年は歯を食いしばりながらも、目の前に立つ隊長を見上げるようにして胸を張った。 「君の疑いは晴れた、もう行ってよろしい」 隊長がぶっきらぼうに告げると、女は不満気に腕を交差させた。 「あら、隊長さん、それだけ?」 「それだけ…とは? あ、いや、そうだったな。ロバートの名誉を回復することをここに宣言する。後ほど君が厄介になっている酒場へ行き、改めて説明させてもらおう」 「隊長さんはそう言ってるけど、あなたはそれでいい?」 女が少年の顔を覗き込むと、ロバートは汚れた袖で涙を拭う。 「いい、早く帰りたい」 ロバートはそう呟くと、ぐっと両手を握りしめた。 「…じゃ、後のことは任せるわ」 「はっ」 敬礼で二人を見送ると、隊長はふぅと息を漏らした。どうやらかなり緊張していたらしい。 「隊長?今の女はいったい?」 ためらいつつも、好奇心に負けたアルヴィンが聞く。 「ああ、あんまり本人に聞こえるようなところで言うなよ、ありゃ女王陛下直属の銃士隊だ。俺たちがちゃんと働いているか見に来たんだとさ」 「そりゃまた、厳しいことで」 アルヴィンが軽口を叩くと、隊長はふと思い出したように呟いた。 「そうだな、アルヴィン、これから話すことを休憩中にでも仲間に伝えてくれ。巡回中にもこの件について質問されればなるべく答えるように」 「へい」 「、アルビオン難民ならびに疎開民と、ラ・ロシェール市民の対立を目論んでいたらしい。ラ・ロシェールを荒らすよう雇われていると自白した」 「今のやつがですか」 「何者かに金貨で雇われたらしいが、その取り分で仲間割れを起こして『金の酒樽亭』に死体が転がってる。さっきの女は銃士隊の一員で、この件には偶然関わったんだと」 「なるほどねえ、この街にもアルビオン帝国の間諜が入り込んでるってことですかい」 「そうなるな。手口は、いわゆる狂言スリだが、なにせ被害者の数が多い、銃士隊からは『被害者の名誉回復に努めよ』ときつく命令されたよ」 「わかりやした」 アルヴィンは、道理で隊長のしかめっ面がいつもより厳しいはずだ、と納得して詰め所の仲間のもとに向かった。 隊長はそれを見届けると、緊張が解けたのか自然と深呼吸をしていた。 「つれぇなあ」 隊長は、誰に言うでもなく呟いた。無性にエールを飲みたい気がした。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ロバート!よく帰ってきたねえ、ほんとうに大変な思いをさせたね。お腹が空いているかい?すぐ何か作ってやるよ」 酒場の女将がうれしそうに目元をほころばせて、ロバートを抱きしめた。 ロバートは少し苦しそうだが、決して嫌そうではない。 「おばさん、苦しいよ。このお姉さんが屋台で買ってくれたから、食べ物はいいよ」 「ああ、ごめんよ。つい嬉しくてねえ。あんたもよくやってくれた。銃士隊のロイズさまさまだ、今日はいくらでも飲んでおくれ」 ルイズは自分がロイズと名乗っているのを思い出しつつ、女将の豪快な言葉に苦笑した。 「これも仕事のうちよ。まだやることがあるから夕食は遠慮するわ」 「食べて行かないのかい?そんなんじゃ筋肉はつかないよ」 「ややこしい用事があるから、また時間のあるときに来るわ。ロバートもその時また会いましょう、元気でね」 女将から解放されたロバートがルイズを見上げる。 「おねえちゃん、ありがとう。でも、俺だけじゃなくて、もっと嫌な思いをしてる奴が居るんだ。俺はコーラのおばちゃんを知ってたからいいけど、友達は、どこに行ったかわかんない。わかんないんだ」 ルイズは、思わずロバートの前に跪いて目線を合わせた。 「私はそれを調べに来たの。もし、あなたが知っていることがあれば、教えてくれない?」 「……人買い」 「人買い?」 「この街の、東の山間にある貴族の家、あそこに出入りしてる奴、人買いなんだ。絶対そうだ、あいつら、アルビオンから逃げてきた俺達を捕まえてるんだ」 「その話、もっとよく聞かせて」 ルイズの目付きが鋭くなったのを、女将は見逃さなかった。 「ロバート、その前にあんたは体を拭いて、着替えてきな。鼻声で何言ってるか分かりゃしないよ」 「う゛ん」 「ノミが付いてたら困るから、ちゃんと洗うんだよ」 ロバートはぐしっ、と鼻を袖で拭うと、酒場の奥へと駆け込んでいった。 「悪いね。この話は、あたしから先に伝えておこうと思ってね」 女将はいつの間にかワインを開けて、ルイズと自分の分を準備していた。 客の居ない酒場で、丸いテーブルの上に置かれたワインがふわりと香った。こんな酒場にあるのが不思議な上物のワインだとも分かる。 「一杯ぐらい飲みなよ」と言って女将が勧めるので、ルイズは酒の価値に気づかないふりをしつつワインを口に含んだ。確かに上物だった。女将なりの御礼なのだろう。 「本当はね。銃士隊だからといって信じられなかったんだ、あたしたちのためにロバートを取り返してくれるのか、どんな手で取り返すのか、それが疑問だった。悪いね疑い深くて」 「本当ならアニエスに来て欲しかったんでしょう? 銃士隊としてではなく、友人として聞いて欲しい話があった。違う?」 「その通りさ。そのへんを理解してくれると助かるよ。」 「…で、そこまで用心深くなる理由は?」 ルイズがそう聞くと、女将は神妙な顔つきになって、小声で話しだした。 「まず聞くけど…ロバートは狙われたのかい?それとも偶然に疑いをかけられたのかい?」 「偶然、よ。狙われる理由でもあるの?」 「ロバートと同じ時期に疎開してきたアルビオン人には子供もいたが、身寄りがなくてね、この街の実験を握ってるメルクス男爵の屋敷に連れていかれたのさ」 「男爵の屋敷に…どうして」 「仕事ができる場所や孤児院を紹介するって名目で連れていかれたのさ。だけどロバートは見ちまった。男爵の屋敷から、アルビオンで見た奴隷商人が出てくるのをね」 「それって、男爵と奴隷商人が結託してるって事?」 「ああ、その通りさ。ロバートはその子らに会って、ここから逃げようと説得したんだが、衛兵に追い出されてねえ。それから数日して、逮捕されたわけだから、あたしゃ肝を冷やしたよ」 「そういう事情があったのね…」 「あたしは、傭兵上がりってだけじゃ信用できなくてね。お偉い貴族に雇われていい気になる奴を見てきた、だから」 「アニエスに紹介された銃士隊といえど、すぐには信用しなかったって訳ね」 「悪いね」 「それぐらいの用心、アニエスなら『当然だ』で済ませるわよ」 ルイズは笑って答えると、ワインを飲み干した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 夕方。 世界樹に停泊しているトリステイン軍の軍艦内では、トリステイン軍の軍議が開かれていた。 大型戦艦の中に設置された会議室では、教導士官、技術士官、軍参謀など、二十名ほどが集まり、物資搬入が予定通り行われているか、人員は、将軍はいつ乗艦するのかと報告を受け、最終的な打ち合わせをしている。 その中には、レキシントン号の艦長を務めた、サー・ヘンリ・ボーウッドの姿もあった。 彼は上官の命令に従い、反乱軍として王党派と戦ったが、トリステインとの戦いに負けて捕虜になった男である。 教導士官には相応しく無いという声もあったが、トリステインはアルビオン空軍の戦略、戦術を知る必要があった。 ウェールズ皇太子とはじめとするアルビオン亡命政権と、アンリエッタ女王陛下の助言、そして本人の強い希望により、ボーウッドは教導士官に任命されたのである。 もちろん皆が納得するわけではなかった、「敗軍の将は何をお考えですかな」と皮肉を込めてボーウッドに質問する将校もいた。 しかし打てば響くように、ボーウッドは軍務関係の質問であれば難なく答えてしまう、豊富な経験に裏打ちされた知識は、士官達の関心を引き、尊敬の念すら抱かせたのだ。 護衛として壁際に立つワルドも、ボーウッドの言葉には学ぶものがあった。 彼の上官が無能でなければ、トリステインは前回の戦で負けていただろう……素直に、そう思えた。 その日、月が高くなる時間になって、ようやく軍議が終わった。 士官達は、ラ・ロシェールの駐屯地に戻って行ったが、ボーウッドだけはラ・ロシェール領主から晩餐会に招かれ、領主の屋敷で宿泊することになっている。 晩餐会に出席させてやるから軟禁は我慢しろ、という意図があるのだが承知のうえである。 ボーウッドはワルドと共に馬車に乗り、屋敷へと向かっていった。 コツコツと蹄の音が、ガラガラと車輪の音が聞こえる馬車の中で、ボーウッドはふとワルドの顔を見た。 静かに馬車の外を見つめ、自分のことなど気にしているとは思えなかった。 「気になりますかな」ワルドが呟く。 「気にならぬといえば嘘になる。…正直に言えば、貴公とこのような形で同席するとは思わなかった」 「同意見です。見る者が見れば、おかしな組み合わせだと思うことでしょう」 ワルドは無表情で答えているが、どこか自嘲気味に見える。 「…祖国を裏切った者同士という事かね」とボーウッドが聞く、ワルドは今度こそ自嘲気味に笑った。 「はは、慣れませんか」 「慣れないな」 少しの間、がらがら、がらがらと馬車の音だけが響いた。 「私も、正直に言えば慣れません。しかし…」 「しかし?」 「裏切るよりも、辛い生き方を知りました。裏切り者として祖国の貴族から非難されても、大した事ではないと思えたのです」 「なるほど」 すこし間があって、膝に肘をつくようにしてワルドに顔を近づけたボーウッドが、重々しく声を出した。 「これは…私の個人的な興味として、聞いてみたいのだが。君は最初から二重スパイだったのか。それとも途中で?」 「後者です」 ワルドは躊躇わずに答えた。 それが予想外だったのか、ボーウッドの目に一瞬動揺が浮かんだが、すぐに気を落ち着けて背もたれに体を預けた。 貴族は名誉を重んじるが、名誉のためならば多少の不都合は目をつぶるという一面もある。 彼と、トリステインと、レコン・キスタの間にどんな関わりがあったのか、どんな理由があって彼が今の立場にいるのか、そんな事を聞いても正直に答えてくれるはずはないのだ。 「…余計なことを聞いたな」 「いえ」 それから間もなく、ボーウッドとワルドを乗せた馬車が、ラ・ロシェール伯の別邸へ到着した。 ラ・ロシェールは港という性質上、王宮が直接統治している土地であり、ラ・ロシェール伯爵はある種の名誉職として扱われている。 何百年も前に、トリステイン大公の別荘として立てられた宮殿を現在でも用いて、ラ・ロシェール伯の別邸として利用されているのである。 馬車が門をくぐり抜け、庭園を超えて正面玄関に到着すると、魔法衛士隊のマントを着たワルドが馬車から降り先導を務めた。 表情には出さないものの、晩餐会に招かれた貴族の中にはワルドを嫌うものもいる。 トリステインを裏切り、仲間を殺した男である以上、蔑むような視線は当然だろう。 晩餐会は立食の形式で行われた、ラ・ロシェール伯の挨拶が終わると、ボーウッドは空軍関係者に親しげに声をかけられて、歓談に興じた。 船上では、上官の命令に過不足なく答えることが唯一絶対であると聞いたが、そういった気風はトリステインもアルビオンも変わらぬらしい。 歴戦の勇士であるボーウッドは、間違いなく尊敬を集めているようだ。 「お客様、本日はガリア産のリキュールと、タルブ産のワインに良いものがございます」ワルドはふと、その言葉が自分に向けられたものだと気づいた。 銀製のトレイを持ったメイドに酒を勧められるなど久しぶりだが、ボーウッドの護衛と監視があるので酒は飲む気がしない。 「酒はいい。果実を絞ったものはあるか」 「赤いオレンジが冷えております、他にも…」 「それでいい」 「かしこまりました」 不思議と、飲み物をもらうだけの会話で、少し気が晴れる気がした。 「…僕に話しかけてくれるのは、メイドだけか」 カタカタとデルフリンガーが揺れ、ワルドだけに聞こえるような声でつぶやく。 『遍在じゃなく、自分が嬢ちゃんのところに行けば良かったんじゃねーか?』 「僕も今それを考えてた所だ」 デルフリンガーが人間なら、やれやれと言って首や手を振っていただろう。 『やれやれ、嬢ちゃんもおめーも、難儀な性格だ』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 時を同じくして、ラ・ロシェールの酒場では、釈放されたロバートを一目見に自警団が集まっていた。 「ロバートの疑いが晴れた!ラ・ロシェール万歳!トリステイン万歳!アルビオン万歳!」 「「「「「おおーーー!」」」」」 女将のコーラは「自警団全員が酔いつぶれちゃ困るよ!」と怒鳴るものの、うれしさは隠しきれていない。 自警団の団長は服飾の卸をしている初老の男性で、仕事でも見回りでも革製のエプロンを愛用している。ぷはぁエールを飲み干し、自警団の仲間たちを一括した。 「おい!酔っ払うのは後だ、見回りに出るぞ!」 「へい!」「おう!」「もう一杯!」「さあ行くか!」 自警団の面々は気合を入れると巡回に出発し、酒場は急に静かになってしまった。 「コーラ、ロバートの疑いが晴れたのは嬉しいがよ。この街でアルビオン人とトリステイン人を喧嘩させようって企ては終わっちゃいねえ、これから酷くなるかもしれねえ」 「わかってるよ、この酒場が狙われるかもしれないってんだろ?いざとなればこの子だけでも逃がすよ」 「安心しな!そんな事はさせねえ、何かあったらすぐ俺達にも連絡がくるように、今夜から酒場への巡回を増やす。なにか怪しいことがあったらすぐ伝えてくれ」 「頼りにしてるよ」 この街で、お互い古くからの付き合いがあるのだろう。団長と女将の間には信頼関係が見えた。 ロバートが「おっちゃん、ありがとう」と言うと、団長はロバートの頭に優しくてを乗せた。 「おっちゃん達がおめえ達を守ってやるから、安心しな。おめえの友達も、見つけたらちゃんと教えてやるからよ、な」 「うん」 ロバートの返事に気を良くしたのか、団長ははははと笑って、巡回に出た仲間たちの後を追って出ていった。 自警団と女将のやりとりを聞いて、酒場の奥を借りているルイズが感心のため息を漏らした。 「ずいぶん仲がいいのねえ、酒場って、厄介な人も来るけど、こういう人も集まるのね」 「旅行者も盗賊も、アルビオンに向かうのならこの街を通るからな。強い結束でよそ者を排除する必要があるのさ」 相槌を打ったのはワルド、もっとも彼は今晩餐会に出席しているので、ここにいるのは風の遍在である。 二人は木箱の上に座り、一日の出来事を報告しあった。 「私が捕まえたのは金で雇われた盗賊よ、誰に依頼されたかは探れそうにないわ。その代わりロバートって子から、目当てに近い話を聞けた。…メルクス男爵の屋敷に人買いが出入りしてるそうよ」 「本当か?だとすれば、早くそのことを知りたかったな。今僕は晩餐会に出席しているから、聞き耳を立てるには調度良かったのだが」 「晩餐会?」 「レキシントンの艦長、サー・ヘンリ・ボーウッドが教導士官に任命されたのは知っているだろう。ラ・ロシェール伯が彼を招いたんだ」 「…ふうん。自領を攻撃した戦艦の艦長でしょう?晩餐会に招いて暗殺なんて、よくある話よ」 「可能性は無いと言い切れないが…ボーウッドは他の士官にも一目置かれ、この戦いの鍵を握るといっても過言ではない。伯爵も暗殺されては困ると理解しているさ」 「実際、あなたの見立てでは、どう?」 ルイズの質問に、ワルドはあごひげを撫でながらううんと唸った。 「…勉強になる。これが素直な感想だよ」 「いいなあ。私も勉強したいかな」 勉強したい、というルイズの言葉から、寂しげな雰囲気を感じたが、余計なことを言って気にさせるのも悪かろうと思い、聞かなかったふりをした。 二人が黙ってしまうと、酒場から聞こえてくる喧騒がやけに響く気がした。 「…ねえワルド、ちょっと考えたのだけど、私って子どもっぽいでしょう?」 「子供ではないよ。君は十分に大人だ。ミ・レイディ」 「いじわる。それじゃ子供扱いじゃない。でも今回はそれが役に立つと思うの。孤児として屋敷に入り込むなんて、いいと思わない?」 「しかし、病気の有無ぐらいは調べるだろう。男爵は水系統のメイジだと聞いているし、君の体のことが…」 「たぶん大丈夫よ。考えはあるから」 「ならいいんだが」 「心配、してくれるのね。ありがと」 「ああ」 「そうだ…せっかくだから、乾杯しましょ」 「次は本体で飲みたいね」 二人は話を終えると、安物のグラスで乾杯した。 ルイズは念のため、ワルドに酒場の警備を頼むと、自身は酒場の二階から抜け出してある場所へと向かっていった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 町外れにある通路は、獣道と見紛うような細い道となり、雑木林の奥へと続いていた。 ここまでくるとラ・ロシェールは巨大な岩山にしか見えない。街の灯は隠れ、見上げても世界樹はちょうど岩陰になっている。 この場所が隠されている理由はすぐに分かるだろう。 林立する石碑や、乱雑に置かれた石、そこら中に立てられた杭、そして鼻を突く腐臭…。 そう、ここは行き倒れや、身元の分からぬ者が埋められた共同墓地である。 「おうぅうう、おおお…」 幽鬼のような唸り声を上げて、墓場を徘徊する女がいた。 「どこ、どこにいるの」と弱々しく呻いては、石をひっくり返そうとしたり、手で地面を掘り返そうとしている。 エプロンは泥で汚れ、指先はぼろぼろに荒れていた。 「あううあああ、ああああああ」 四十前の彼女は、飢えと涙とで顔をくしゃくしゃにして、まるで老婆のような顔をしている。 この地に埋められた子供を掘り返そうとするが、手に力が入らない。 諦めてまた泣くが、すぐにまた地面に指を伸ばす。 それが延々と続けられていた。 「お父さんはどこに行ったの、エリーはどこにいるの、エリー、えりぃいいい…」 正気ではない女の背後に、ゆっくりと近づいていく。 小声でルーンを詠唱し、消すべき記憶を定めて、杖を向ける。 「…忘却」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ああ、エリー、ここにいたんだね!ここにいたんだねえ、ああ、エリー、おおお…」 女は、娘を抱きしめて泣き出した。 女はひとしきり泣くと、娘の顔を月あかりに照らして、泥だらけになった顔を拭おうとした。 「…お母さま」 「ああ、エリー、よく顔を見せておくれ、泥だらけになっているよ」 そう言って子供の顔を拭おうとするが、女の手についた泥がつくばかりで、かえって顔を汚している。 「お母様こそ泥だらけよ、ねえ、もっと暖かい所へ。もっと明るいところへいきましょう」 「そうだねえ、明るいところへ行こうねえ、お前の文だけでもパンを貰ってくるから、もう少し我慢しておくれ」 「ありがとう、お母様。でも、お母様こそ食べて欲しいの」 「優しいんだねえエリーは、いいんだよ、私はお腹いっぱいだから…」 「お母さま…」 親子は手をとりあって、街へと歩いていった。 あとに残るのは、カラスの鳴き声と、掘り返されたエリーの遺体。顔のない遺体。髪の毛と顔が剥がされた娘の遺体。 「お母様、この街の男爵様が私たちを助けてくれるそうよ。きっと二人分のパンをくださるわ、行きましょう」 月明かりの中。仮面を被ったルイズのほほえみ、まさしく娘の微笑みだった。 ======================== 今回はここまでです。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2218.html
「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」 「おいおい、あんまり召喚が出来ないもんだから、そこらへんの平民を雇ったんじゃないのか?」 失敗に次ぐ失敗を繰り返すこと24回。 ルイズの召喚魔法で現われたのは、ほっそりした黒髪の美人だった。 「ミスタ・コルベール! やりなおしをさせて下さい!」 あまりの事にやりなおしを要求するルイズだったが、コルベール先生はにべもない。 春の使い魔召喚は神聖な儀式だ、やり直しは認められないの一点張り。 「でもっ、平民が使い魔だなんて聞いたことありません!」 「実は私、平民じゃなくて貴族なんです」 「ええっ!?」 「なんですと!?」 召喚された使い魔の突然の発言に驚くルイズとコルベール先生。 貴族を召喚したとなると、場合によっては国際問題にもなりうる大変な事件だ。 「ほ、本当に貴族なのですか?」 「ええ、嘘です」 困惑しながら聞いたコルベール先生に、しれっとした顔で答える女性。 「本当は私、エルフなんです」 「ええええええ、エルフー!?」 ズサッと音をたてて女性から離れるルイズ。 他の生徒も一様に数歩後ろに下がっている。それほどにエルフは恐れられているのだ。 「どどどどどうせまた嘘なんでしょう? だって耳が長くないじゃない!」 「私の父はエルフだったんですが、人間だった母と恋に落ちて、私が生まれたんです。 でも、二人の仲を認めない周囲の人達によって二人は……そして私もあわや……」 「そんな事があったのですか……おかわいそうに、ミス、えーっと……」 「ひとみです」 「ミス・ヒトミ。それでは本当に、あなたはエルフの血を引いているのですね?」 悲痛な表情で同情したようにコルベール先生が言う。 彼は基本的に平民にも分け隔てなく優しい人物だ。 もちろん、ひとみと名乗った女性が美人だからというのも無関係では無いが。 「ええ、もちろん嘘です」 「なんですかそれはーっ!!」 ガクっとこけるコルベール先生。 周囲の生徒達も一気に脱力してしまう。 その中からいち早く立ち直ったのはルイズだった。 「ミスタ・コルベール! やっぱりこんな嘘つきの使い魔なんて嫌です!! やり直しをさせて下さい!」 「ダメですよミス・ヴァリエール。きちんと契約しないと、進級できませんからね?」 「ううううう……仕方ないわ。こうなったらさっさと契約よ」 「契約……さては私にインチキな商品を売りつけて身包みをはがそうという魂胆ですね?」 「そーゆー契約じゃないわよ!」 「そうですか、安心しました。ではこの契約書にサインをお願いしますね」 「えーっと、ここで良いのかしら……って、ちがーう! 貴方が私と契約するんじゃなくて、私が貴方と契約するのよっ!!」 「まぁまぁ、べつにどっちでも良いじゃないですか」 「良くないわよ! 大体何よこの契約書は! 『私は貴方に全財産を譲渡します』? こんな契約するワケないでしょう!」 「ちっ」 「アンタ今『ちっ』て言ったぁ!!」 「しかたありません。お詫びに貴方と契約をしましょう」 「は、はじめっからそうすれば良いのよ」 「そのかわり、私の身の回りの世話と秘薬の原料を探してくる仕事、それと私の護衛は貴方がやって下さいね」 「逆でしょうがソレっ! って言うかなんでそんなに詳しいのよ!」 「ゼロの使い魔は全巻読んでますから」 「ナニよソレ?」 「もちろん嘘です。これなんてエロゲな小説なんか全然読んでません。 12巻なんか覗きとか百合とか大変な事になってるじゃないですか」 「キッチリ読んでるじゃないのーっ!!」 「タバサの冒険の2巻は今月発売なんですよね? この近くにライトノベルが置いてる本屋さんってありますか?」 「知るかーっ!」 「でもラノベって店員さんにオタクの人が居ないとレーベルの絞りが甘かったり、在庫の揃いが悪くて大変なんですよシャナさん?」 「そーゆーこと言うの禁止! 二重の意味で禁止よっ!」 「うるさい! うるさい! って言ってください。メロンパンあげますから」 「要らないから黙れ!」 「24のひとみ実写ドラマも10月放映なのでお見逃し無く」 「ますます知るかーっ!!」 凄い勢いでボケるひとみと突っ込むルイズ。 「い…いいかげんに……ゼイ……ハァ……そのしょうも……ない発言を、やめ……ハア」 「あら、それじゃあ私は必要ないって事ですよね? では失礼しますねー」 「え!? あ、ちょっと! ハァ、ハァ、ってゆーか、ゼイ、しょうもない発言が、ハァアンタの存在意義なの……?」 ついに息切れしたルイズがゼーハーと息を整え、周囲の誰もがポカーンと呆れているうちに、スタコラと逃げ出してしまった。 既に息が切れて追いかける体力も無いルイズ。 この後当然、クラスメイトから「召喚した使い魔に逃げられた」と馬鹿にされてしまうのだった。 こうしてルイズの春の使い魔召喚儀式は失敗。 失意に崩れ落ちそうな少女は、追い討ちのように学院長室へ呼び出しを受けてしまう。 「ああ、きっと留年を通告されるんだわ……お父さまやお母様やお姉さまになんて言おう……」 思い足取りで階段を登り、いっそこのまま何処か知らない国に出奔してしまった方が楽かと思い悩みながら、 ルイズは学院長室の立派で大きなドアをノックした。 「どうぞ、入って下さい」 中から女性の声が聞こえる。 しかし、それは秘書のミス・ロングビルの声ではなかった。 ついにセクハラに耐えかねて新しい秘書に代わったかと思いながらドアノブに手をかける。 「鍵はかかってますから。あと開けると爆発するトラップが」 「そんなワケあるかー! 見つけたわよ私の嘘つき使い魔!」 蹴破るぐらいの勢いで扉を開け、学院長室へ転がり込むルイズ。 「はい、嘘です」 「なんでこんな所に居るかは聞かないわヒトミ! とにかく私の進級のために契約しなさい!!」 「ダメですよルイズさん。先生をヒトミなんて呼び捨てにしちゃあ」 「誰が先生よ! もうアンタの嘘はお腹一杯なの!」 「いや、ミス・ヴァリエール。それは本当じゃ」 「え?」 ギギギと音がするような動きで首をめぐらせた先に居たのは、学院長のオールド・オスマン。 「ミス・ヒトミは今日から我が学院の教師になった。 それに伴い、ミス・ヴァリエールの進級は特例として認められたので、安心なさい」 優しく言葉をかけてくれる学院長。 しかし、ルイズにとってはもっと気になる部分があった。 「ヒトミ、先生?」 「はい」 あまりの理不尽な展開に目の前が暗くなる。 どうせオールド・オスマンは美人だからとかそんな理由で教師にしてしまったに違いない。 トリステイン魔法学院オワタ。 そう思いながら、ルイズの意識は暗転していった。 「ってお話が冒頭から全部嘘なんですけどね」 そんな声を遠くに聞きながら。 終わり 週間少年チャンピオン連載の「24のひとみ」から 嘘つき美人教師ひとみ先生召喚でした。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4299.html
「次の停車駅は~、惑星ハルケギニア~、惑星ハルケギニア~、停車時間は一ヶ月~」 鉄郎はその星で聖地と呼ばれた銀河鉄道ステーションに降りた直後、コントラクト・サーヴァントで召喚された ルイズの使い魔となった鉄郎は、盗難された学院の秘宝を奪還するためにフーケのゴーレムと対峙する 「テツロー!この秘宝『宇宙の竜騎兵』は取り返したわ…」 「ルイズ!それを"返せ"!」 鉄郎は戦士の銃コスモ・ドラグゥーンでフーケのゴーレムを撃ち砕き、勝利した 後に鉄郎とルイズは神聖アルビオンとの戦争に巻き込まれ、戦艦レキシントンの攻撃に晒されるが その時、タルブ村の地下での長い眠りから目覚めた宇宙戦艦ヤマトがやってきた(第二案、ハーロック) ルイズは戦艦ヤマトの艦首で虚無の魔法をエネルギー変換して、レキシントンに叩き込んだ 「…これは…波動砲…」 後に鉄郎はルイズを守るため、7万のアルビオン軍に戦士の銃一丁で立ち向かうが 深い傷を負った鉄郎はウエストウッド村に住む金髪で豊満な体型の黒服女性に助けられる 「…鉄郎…999に帰りましょう」 鉄郎はこの星を去った なお、メーテルや森雪、エスメラルダのような松本零冶作品の女性とは似ても似つかぬルイズは 鉄郎にとっては女でなく、恋愛対象にはなりえなかったとか ルイズが星野鉄郎を召喚